最近、心理的安全性を高く保つことが大切である。という話をよく耳にします。
今回は、書籍「恐れのない組織」から学んだ
「心理的安全性とは?」について紹介しつつ、
心理的安全性を高く保つために
リーダを意識や実行すべきことを紹介します。
また、そもそも心理的安全性とは?
どうやって高く保つの?
という具体的な部分については
知らないことも多いのではないでしょうか。
そこで、今回はつり革広告を見て気になっていた
書籍「恐れのない組織」を読み、
上記の疑問を解決したいと思います。
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想定する読者
想定する読者は以下の通りです。
- 組織におけるリーダポジションの方(チームリーダ、マネージャ等)
- なぜ心理的安全性が重要であるのか分かっていない方
- 心理的安全性を高めるために何をどうすればいいのか分かっていない方
本記事を読むことで、上記の想定する読者が
明日から「1つでも意識や行動を変えよう」と
思ってもらえることがゴールです。
本記事の中で、明日に繋がる何かを1つだけでも
見つけていただければとても嬉しいです。
それでは本文に入りましょう。
この記事で得られるもの
本記事を読むことで、
以下の気付きが得られます。
- なぜ心理的安全性が大切なのか
- 心理的安全性が高いと組織にどのようなメリットをもたらすのか
- 心理的安全性を高めるために必要なリーダーシップ
心理的安全性とは
本章では、心理的安全性の理解を深めます。
本書籍では、心理的安全性を以下のように定義しております。
率直に発言したり懸念や疑問やアイデアを話したりすることによる対人関係のリスクを、人々が安心して取れる環境のこと
人間誰しもが、
何かしらの組織の中で意識的にも無意識的にも
対人関係のリスクに絶えず対応しています。
このような状況下において、
アイデアや疑問や懸念を率直に話し合う事を
制限してしまったことは無いでしょうか?
もしも心当たりがあるのであれば、
それは心理的安全性が「低い」組織と言えるかもしれません。
この心理的安全性を作る上で重要な役割を果たすのが、チーム、部署、支社など社内グループのリーダーです。
リーダーには何が求められるのかについては、
記事の後半で解説いたします。
心理的安全性が大事な理由
組織のパフォーマンスを向上させる文化の形成に直結するためです。
ここでいう文化には、
以下のような意味合いが含まれています。
- 職場の問題を発信し、自ら改善していく文化
- 重要かつ深刻な問題がすぐにエスカレーションされ、改善される文化
- 組織のメンバー達が衝突を恐れずに、率直に意見を述べられる文化 等
いわゆるトップダウン型の組織ではなく、
自己組織化された、ボトムアップ型の組織に必要不可欠な土台に当たる文化です。
組織に属していると、
リーダ層の方々から以下のようなお言葉を
聞く機会が多いのではないでしょうか。
- 積極的に失敗しましょう
- 悪いことはすぐにエスカレーションする
- 意見があれば何でも聞くよ 等
実際、上記のようなアクションを素直に取れるかどうかは、その組織の「心理的安全性」の高低が関係します。
心理的安全性が高い組織と低い組織
実際に、心理的安全性の高低が
どのような影響をもたらすのか、
いくつかの例を挙げます。
心理的安全性が低い組織
- 不安と脅しによってパフォーマンスを上げる恐怖支配および文化
- 上記が原因で不正が起こる
- 経営陣と中間管理職の間で率直に発言できなかったために経営方針を誤る
- 「ノー」も「無理です」も認めないトップダウンの文化
- 上記文化の副産物として、詐欺と隠蔽が蔓延する
心理的安全性が高い組織
- 建設的に、個人ではなくプロジェクトに意見を出し、
より良いものを作り上げられる - 失敗を恐れなくなることで、多くの失敗をして、
多くの学びを早く得ることができる - チームが状況を理解し、不安を克服し、問題をすぐに解決できる
心理的安全性が低い組織ほど、
「トップダウン型」であり、
失敗から学ぶという文化が育ちにくくなることが分かります。
あなたの組織の心理的安全性診断
そろそろ、自分の組織の心理的安全性は高いのか?低いのか?
気になってきたのではないでしょうか。
本書籍の中では、心理的安全性を診断するための文献が紹介されています。
文献によると、組織の心理的安全性は
いくつかの質問によって
簡易的に測定することが出来ます。
※詳細は本文献(Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams.)のP350-83をご覧ください
以下の質問には7段階(「非常にそう思う」から「全くそう思わない」まで)のリッカート尺度を用います。
なお、(R)がついている項目は、得点データを逆にします。
つまり、「全くそう思わない」のほうが得点が高くなるということです。
このチームでミスをしたら、きまって咎められる(R) |
このチームでは、メンバーが困難や難題を提起することができる |
このチームの人々は、他のと違っていることを認めない(R) |
このチームでは、安心してリスクを取ることができる |
このチームのメンバーには支援を求めにくい(R) |
このチームには、私の努力を踏みにじるような行動を恋にする人は誰もいない |
このチームのメンバーと仕事をするときには、私ならではのスキルと能力が高く評価され、活用されている |
是非とも組織内のメンバーと共に測定してみてはいかがでしょうか。
次の章からは、
「どうするば心理的安全性を高められるのか」
Howに当たる部分を紹介していきます。
心理的安全性の高い組織やリーダーを参考にする
ここからは、実際の心理的安全性の高い組織における組織文化を紹介します
ピクサー(Pixar)
ピクサーでは素晴らしいものをつくるプロセスで悪いものを受け入れるために、
専門家集団なかで3つのルールを掲げているようです
- フィードバックする際には建設的に、個人ではなくプロジェクトについて意見を述べる。監督は喜んで耳を傾ける姿勢を持つ
- トップダウンにしろその逆にしろ、相手に強制することはできない
- 率直なフィードバックは、あら探しして恥を欠かせることではなく、共感の観点から行わければならない
「率直なフィードバック」が大切であることが分かります。
レイ・ダリオ(Ray Dalio)
レイ・ダリオでは「徹底した素直さ」を大切にしています。
詳細は「書籍:PRINCIPLES 人生と仕事の原則」に示されています。
レイ・ダリオが創設したブリッジウォーターアソシエイツでは、以下を守り、
心理的安全性を高めているようです。
- 考えたことは口にしなければならない。胸に秘めていてはいけない
- 率直であることは、つらかろうと、必ず真実につながって成果を生む
- 自分の意見や考えを、ともに仕事をする人々に伝える義務がある
- 率直なフィードバック
- 席を外していて他人の意見から学べないときは、席を外しているその人について話してはならない
- 陰口を言う者は卑劣な密告者
率直に意見を述べるためには、
あることを自覚すべきであると、
レイ・ダリオが原則の1つに加えています。
アイリーン・フィッシャー
あることとは、「無知の人になる」ことです。
アイリーン・フィッシャーは
「無知」に価値を置いています。
無知であるが故に、
様々な人に謙虚に耳を傾けるそうです。
「相手の考えや主張を理解するより、何も言わないほうが安全だ」と思うようになってしまうことが問題、無知を演じて、率直に意見を述べることが大事であると言えます。
グーグルX
発明と革新を行う研究所であるグーグルXでは、
安心して失敗出来るような仕組みづくりがされているそうです。
それは、「失敗したら報奨金を出す」というものです。
これには驚きました。
また、やってみても上手くいかないことが分かったのに、失敗したくないという想いから、
なおも続けてしまうことを避けるために、
「プロジェクトを打ち切ったチームには一人ひとりにボーナスが出る」という仕組みもあるそうです。
「たくさん失敗してください」と口で言われるよりも、具体的な報酬が与えられているほうが、何倍も失敗し易そうな気がします。
バリー・ウェーミラー
従業員の意見を聞いて策定された社内文書
「リーダシップの基本理念」は、
信頼と意義と誇りを大切にし、
メンバーそれぞれの最高の力を引き出し、
称賛する環境を最大の目的に作られています。
実際、バリー・ウェーミラーの文化として主に以下のようなものがあるそうです。
- チームを安心させる
- 信頼を打ち砕き自尊心を傷つける習慣を取り払う
- 実際にその仕事をする人にプロセスのデザイン・再デザインをしてもらう
上記にあるように、恐れのない組織は、改善のための提案が積極的に採用、導入されているようです。
ここまででいくつかの組織を紹介しましたが、
共通して言えることは、率直に話し、エンゲージし、力を合わせ、リスクを取るという特徴を持つ環境を作り出していることです。
このような組織を作り出すためには、個の力だけではなく、リーダシップも重要となります。
次の章から、心理的安全性を高めるための
リーダーシップについて紹介していきます。
リーダが行動を変えることで心理的安全性を高める
心理的に安全な職場をつくるには、リーダシップが必要です。
本書籍では、とても納得感が持てるリーダシップの定義がされていました。
リーダシップとは、当たり前にできない行為(率直に話す、賢くリスクを取る、さまざまな意見を受け入れる、極めてチャレンジングな問題を解決する 等)に、人と組織が真摯に取り組めるようにする力と言える。
普段何気なく業務を進める上で、嫌だな… 避けたい…ということに対して
真摯に向き合えるようにする力がリーダシップであるというのは
非常に納得できます。
では、「当たり前に出来ない行為」に取り組めるようにするために、
リーダはどういったことを考えて、どのように行動すれば良いのでしょうか。
本書籍では、上記について、
心理的安全性を高めるリーダシップのためのツールキットという形で紹介されていました。
※ツールキット:特定の目的や活動に役立つ一連の知識とスキル
リーダシップのためのツールキット
カテゴリー | 土台を作る | 参加を求める | 生産的に対応する |
リーダの努め | 仕事をフレーミングする 失敗、不確実性、相互依存を当たり前とし、素直な発言の必要性を明確にする目的を際立たせる 危機にさらされているものと、それがなぜ、誰にとって重要であるかを意識する |
状況的謙虚さを示す 完璧ではないことを認める探究的な質問をする よい質問をする 集中して「聴く」手本を示す仕組みとプロセスを確立する 意見を募るためのフォーラムを設ける ディスカッションのためのガイドラインを示す |
感謝を表す 耳を傾ける 受け容れ、感謝する失敗を恥ずかしいものではないとする 失敗に目を向ける 支援を申し出る 次のステップについて話し合い、熟慮し、ブレーン・ストーミングする明らかな違反に制裁措置を取る |
成果 | 期待と意味の共有 | 発言が歓迎されるという確信 | 絶え間ない学習への方向づけ |
上記表の読み方は以下の通りです。
カテゴリーは心理的安全性を構築する上でのステップです。それぞれのカテゴリーにおいてリーダに求められる努め、努めを果たすための成果物がそれぞれ記載されています。
まずは率直に発言する土台を作るために、失敗を当たり前なものとして認識させ、
目的を理解してもらうことが重要です。
この努めを果たすために、リーダはメンバーに対して期待と意味を共有します。
そして、メンバーの参加を求め、率直な発言が出るようになることが重要です。
そのためには、自らが完璧ではないことを認め、「聴く手本」を示し、意見を募るための仕組みとプロセスを確立します。
この努めを果たすために、リーダは発言が歓迎されるという確信をメンバーに与えます。
率直に発言が出るようになるだけでは足りません。
次に、失敗から学ぶために失敗に対して生産的に対応します。
このために、感謝を示し、失敗は恥ずかしいものではないことを伝えます。
この努めを果たすために、リーダは絶え間ない学習への方向づけをメンバーに促します。
これらのリーダの努めによって、組織に心理的安全性を築き上げることができます。
※更に詳細なHow(具体例)は書籍を直接ご覧ください
このように、心理的安全性工場のためにリーダが果たす役割を体系的に整理したものが、
本フレームワークとなります。
その他リーダシップに重要なTips
その他にも、書籍を読んでいて学びになった、
リーダシップにおけるTipsを紹介していきます。
インクルーシブ・リーダーシップ
包括的リーダシップとも言われています。
インクルーシブ・リーダとは
一人が率いる旧来型リーダーシップとは異なり、組織のメンバー ひとり一人のなかにあるリーダーとしての資質を引き出しながら、 全員で組織を引っ張っていくという「個の尊重」と「組織内の関係性」に注目したリーダーシップ概念です。
従来的なトップダウン型のリーダシップとは
対比して描かれることが多いようです。
インクルーシブなリーダには以下の特徴が現れます
- リーダは気さくで話しやすい
- リーダは自分が完璧ではなくミスをする人間であることを認識している
- リーダは他のスタッフから、彼らが発言しやすいように意見を求める
インクルーシブ・リーダーシップには
発言を引き出す質問とともに、
状況的謙虚さが現れていて
このようなリーダは、組織に心理的安全性を作り、高めていくことができる
本書籍の中で語られています。
人々が取るリスクに対し、リーダが生産的に対応する
- 感謝を表す
- 失敗を恥ずかしいものではないとする
- 明らかな違反に制裁措置を取る
シンプルで効果抜群なフレーズ
- 分かりません
- 手助けが必要です
- 間違ってしまいました
- 申し訳ありません
- 自分の弱さをさらけ出す表現
気づきをもたらすメッセージ
心理的安全性の最も影響を与えているのはリーダ
メンバーはリーダの行動を通して考え方や価値観を読み取り、自らの行動に反映させる
メンバーはリーダから学ぶということですね。
そのためにも、まずはリーダが率先して発言を歓迎し、失敗を恐れず、学ぶ姿勢を示す必要があります。
リーダとメンバーの感覚にはズレが生じやすいという「構造的問題」がある
一方で、リーダが動かなければ心理的安全性は高まらないリーダとメンバーの間には自然に意識的なずれが生じてしまうことを自覚する
周りの声が届くような職場の構造を形成することが重要
リーダとメンバーの立場等の違いがあることを
理解する必要があるということですね。
リーダ目線だと、「失敗が怖くない組織である」と見えていたとしても
メンバー目線だと、「失敗が怖い組織である」と見えているかもしれません。
常にこのようなずれを理解し、周りの声を拾うことが大事なのかもしれません。
「このリーダであれば真実を伝えても怒らない」、
「このリーダを助けるために実際の状態を伝えたい」
と思わせる、信頼関係を形成する必要がある
メンバーの発言を歓迎し、メンバーが発言を歓迎されていると感られるためには、
リーダに話したい、伝えたいと思ってもらえるような信頼関係の構築が必須ということです。
リーダを頼りたい/助けたいと思ってもらえることがリーダには求められるのかもしれません。
間違いを伝える。失敗する。助けを求める。
これらの行動こそが組織の力の根源である。
これらの行動なくして組織の学習力や想像力は高まらない。
メンバーはリーダの行動を見て学びます。
リーダが、間違いを伝え、積極的失敗し、
助けを求めることで
メンバーはリーダに追従していきます。
口だけで言うよりも、行動で示すことが大事であるということと理解しました。
私たちは弱く、周りの雰囲気に非常に敏感である。
個人の心がけのみで組織の空気に流されずに行動することは困難である。心理的安全性を通して、人間の弱さを見つめ直し、
打ち勝つための本質的な努力を「組織改革」に向けるべきである。組織文化を変えることで、そこにいる個人は大きく変わる。
ゆえに心理的安全性が非常に重要である。
個の人間は周りの雰囲気に敏感で、
弱いものであるということを理解し、
弱さに打ち勝つための努力を「個」ではなく「組織改革」に向けるべきである
ということと理解しました。
組織文化を変えることで、個人をも変化させていくのが心理的安全性であるのですね。
まとめ
今回は、書籍「恐れのない組織」について紹介いたしました。
心理的安全性は組織のパフォーマンスを向上させる文化の形成に
直結するため、非常に重要なものであると言えます。
心理的安全性が高い組織は、
より率直に発言し、失敗を恐れなくなる等
多くの学びを得ることが出来る組織に育ちます。
心理的安全性を高めるためにも、
リーダは、率直に発言できる土台を作り、
率直な発言を得るためにメンバーに参加を求めます。
そして、率直な発言をしてくれたメンバーに感謝をしつつ生産的な対応を取ることが求められます。
内容的にはとてもボリュームがありますが、
最初から最後まで楽しめる一冊となっております。
心理的安全性やリーダシップについて学びたい方は読んでみてはいかがでしょうか。
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